なかった。わたしはなにも求《もと》めることもできない。なにもたのむこともできない。それをすればこじきになる。
でもわたしはみんなを好《す》いていたし、みんなもわたしを好いていた。
みんな兄弟でもあり、姉妹《しまい》でもあった。カトリーヌおばさんは決心したことはすぐ実行する性質《せいしつ》であった。わたしたちにはあしたいよいよお別《わか》れをすることを言いわたしてねどこへはいらせた。
わたしたちが部屋《へや》へはいるか、はいらないうちに、みんなはわたしを取り巻《ま》いた。リーズは泣《な》きながらわたしにからみついた。そのときわたしはかれら兄弟がおたがいに別《わか》れて行く悲しみをまえにひかえながら、かれらの思っていてくれるのはわたしのことだということがわかった。かれらはわたしが独《ひと》りぼっちだといって気のどくがった。わたしはそのときほんとうにかれらの兄弟であるように感じた。そこでふと一つの考えが心にうかんだ。
「聞いてください」とわたしは言った。「おばさんやおじさんがたがわたしにご用はなくっても、あなたがたがどこまでもわたしをうちの者に思ってくださることはわかりました」
「そう
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