なっていたが、視力《しりょく》はまだなかなかしっかりしていた。ねていた暖《あたた》かいしとねの上から、むかしなじみのハープを見つけると、「演芸《えんげい》」が始まると思ってはね起きて来た。歯ぐきの間には下ざらを一|枚《まい》くわえていた。かれは「ご臨席《りんせき》の来賓諸君《らいひんしょくん》」の間をどうどうめぐりするつもりでいた。
かれはむかしのように、後足で立って歩こうとした。けれどもうそれだけの力がないので、まじめくさってぺったりすわったまま、前足で胸《むね》を打って、来賓にごあいさつをした。
わたしたちの歌がおしまいになると、カピはいっしょうけんめい立ち上がって、「どうどうめぐり」を始めた。みんなが下ざらにいくらかずつほうりこむと、カピはほくほくしてそれをわたしの所へ持って帰った。これこそかれがこれまで集めたいちばんの金高であった。中には金貨《きんか》と銀貨ばかり――百七十フランはいっていた。
わたしはむかししたように、かれの冷《つめ》たい鼻にキッスした。するうち、子どもの時代の困窮《こんきゅう》が思い出して、ふとある考えがうかんだ。わたしはそこで来賓《らいひん》に向かっ
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