いた。さあこの記念《きねん》の席上《せきじょう》でわたしたちの愛《あい》する人びとのために音楽をやろうじやないか」とかれは言った。
「おい、マチア、きみは音楽のほかに楽しみのない男だね」とわたしは笑《わら》いながら言った。「きみの音楽のおかげで雌牛《めうし》をおどろかして、ひどい目に会ったっけなあ」
 マチアは歯をむき出して笑った。
 ビロードで側《がわ》を張《は》ったりっぱなはこから、売ったら二フランとはふめまいと思う古ぼけたヴァイオリンをマチアは取り出した。わたしもふくろの中から、むかしのハープを取り出した。雨に洗《あら》われて、もとのぬり色ももう見分けることができなくなっていた。
「きみは好《す》きなナポリ小唄《こうた》を歌いたまえ」とマチアが言った。
「うん、この歌のおかげで、リーズは口がきけるようになったのだからなあ」
 こうわたしは言って、にっこりしながら、そばに立っていた妻《つま》をふり向いた。
 来賓《らいひん》はわたしたちのぐるりを取《と》り巻《ま》いた。
 ふと一ぴきの犬がとび出して来た。
 大好《だいす》きなカピのじいさん、この犬はもうたいへん年を取って、耳が遠く
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