れきし》に由緒《ゆいしょ》の深い古城《こじょう》の主人であった。
 わたしが汽車からとび下りて、押送《おうそう》の巡査《じゅんさ》の手からのがれて船に乗った、あの海岸から西へ二十里(約八十キロ)へだたった所に、わたしの美しい城《しろ》はあった。
 このミリガン・パークの本邸《ほんてい》に、わたしは母と、弟と、妻《つま》と、自分とで、家庭を作っていた。
 半年前からわたしは城内《じょうない》の文庫《ぶんこ》にこもって、わたしの長い少年時代の思い出を、せっせと書きつづっていた。わたしたちはちょうど長男のマチアのために洗礼式《せんれいしき》を上げようとしている。今夜わたしのやしきには貧窮《ひんきゅう》であった時代の友だちが集まって、いっしょに洗礼式《せんれいしき》を祝《いわ》おうとしている、わたしの書きつづった少年時代の思い出は一|冊《さつ》の本にできあがっていた。今夜集まる人たちに一冊ずつ分けるつもりである。
 これだけわたしのむかしの友だちの集まるということが、わたしの妻《つま》をおどろかした。かの女はこの一夜に、父親と、姉《あね》と、兄と、おばさんに会うはずであった。ただ母と弟にはまだ
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