もういまはそう呼《よ》んでもいいが、――母はそのとき静《しず》かに答えた。
「あなたが法廷へこの事件《じけん》をお持ち出しになるのはご随意《ずいい》です。わたくしはあなたが夫《おっと》のご兄弟でいらっしゃるために、わざとそれをさしひかえたのでございます」
ドアは閉《し》まった。そのとき、生まれて初《はじ》めてわたしは、母を、かの女がわたしにキッスしたようにキッスし返した。
「きみ、お母さんに、ぼくが秘密《ひみつ》をよく守ったことを話してくれたまえ」とマチアがわたしのそばに寄《よ》って来てこう言った。
「ではきみは残《のこ》らず知っていたのか」
「わたしはマチアさんにそれをそっくり言わずにいるようにたのんでおいたのです」とわたしの母が言った。「それはあなたがわたしの子だということはわかっていたけれど、わたしも確《たし》かな証拠《しょうこ》をにぎりたかったから、バルブレンのおっかさんに、着物を持ってここまで来てもらったのです。こんなにしたうえで、つまりそれがまちがいだということになったら、どんなにつらい思いをするかしれないからね。わたしたちはこれだけの証拠のあるうえは、もう二度と別《わか
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