んりょしいしいこの知らせを伝《つた》えたかもしれない。けれどその人はほんの親方というだけであったと知ると、かれらはいきなり事実を打ち明けて聞かしてくれた。
 みんなの話では、あの気のどくな親方は死んだのであった。わたしたちがつかれきってたおれたその門の中に住んでいた植木屋が見つけたのであった。あくる朝早く、かれのむすこが野菜《やさい》や花を持って市場へ出かけようとするときに、かれらはわたしたちがいっしょにしもの上に固《かた》まって、すこしばかりのわらをかぶってねむっていたのを見つけた。ヴィタリスはもう死んでいた。わたしも死ぬところであったのを、カピが胸《むね》の所へはいって来て、わたしの心臓《しんぞう》を温《あたたか》かにしていてくれたために、かすかな気息《きそく》が残《のこ》っていた。かれらはわたしたちをうちの中に運び入れて、子どもたちの一人の温かい寝台《ねだい》の上にねかしてくれたのである。それから六時間ほど、まるで死んだようになってねていたが、血のめぐりがついてくると、呼吸《こきゅう》も強く出るようになった。そうしてとうとう目を覚《さ》ましたのであった。
 わたしはからだもたまし
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