ながら、一日の仕事をすまして、日光の中に出て来るのであった。かれらはひざがしらが痛《いた》むかのように、重い足どりでのろのろと出て来た。わたしはそののちに、地下の坑道《こうどう》のどん底《そこ》まではしごを下りて行ったとき、それがどういうわけだかはじめてわかった。かれらの顔はえんとつそうじのようにまっ黒であった。かれらの服とぼうしは石炭のごみをいっぱいかぶっていた。やがてみんなは点燈所《てんとうしょ》にはいって、ランプをくぎに引っかけた。
ずいぶん注意して見ていたのであるが、やはり向こうから見つけてかけ寄《よ》って来るまで、わたしたちはアルキシーを見つけなかった。もうすこしでかれを見つけることなしにやり過《す》ごしてしまうところであった。
実際《じっさい》頭から足までまっ黒くろなこの少年に、あのひじの所で折《お》れたきれいなシャツを着て、カラーの前を大きく開けて白い膚《はだ》を見せながら、いっしょに花畑の道をかけっこしたむかしなじみのアルキシーを見いだすことは困難《こんなん》であった。
「やあ、ルミだよ」とかれはそばに寄《よ》りそって歩いていた四十ばかりの男のほうを向いてさけんだ。
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