ながら、一日の仕事をすまして、日光の中に出て来るのであった。かれらはひざがしらが痛《いた》むかのように、重い足どりでのろのろと出て来た。わたしはそののちに、地下の坑道《こうどう》のどん底《そこ》まではしごを下りて行ったとき、それがどういうわけだかはじめてわかった。かれらの顔はえんとつそうじのようにまっ黒であった。かれらの服とぼうしは石炭のごみをいっぱいかぶっていた。やがてみんなは点燈所《てんとうしょ》にはいって、ランプをくぎに引っかけた。
ずいぶん注意して見ていたのであるが、やはり向こうから見つけてかけ寄《よ》って来るまで、わたしたちはアルキシーを見つけなかった。もうすこしでかれを見つけることなしにやり過《す》ごしてしまうところであった。
実際《じっさい》頭から足までまっ黒くろなこの少年に、あのひじの所で折《お》れたきれいなシャツを着て、カラーの前を大きく開けて白い膚《はだ》を見せながら、いっしょに花畑の道をかけっこしたむかしなじみのアルキシーを見いだすことは困難《こんなん》であった。
「やあ、ルミだよ」とかれはそばに寄《よ》りそって歩いていた四十ばかりの男のほうを向いてさけんだ。その人はアッケンのお父さんと同じような、親切な快活《かいかつ》な顔をしていた。二人が兄弟であることを思えば、それはふしぎではなかった。わたしはすぐそれがガスパールおじさんであることを知った。
「わたしたちは長いあいだおまえさんを待っていたよ」とかれはにっこりしながら言った。
「パリからヴァルセまではずいぶんありましたよ」とわたしは笑《わら》い返しながら言った。
「おまけにおまえさんの足は短いからな」とかれは笑いながら言い返した。
カピもアルキシーを見ると、うれしがっていっしょうけんめいそのズボンのすそを引《ひ》っ張《ぱ》って、お喜《よろこ》びのごあいさつをした。このあいだわたしはガスパールおじさんに向かって、マチアがわたしの仲間《なかま》であること、そしてかれがだれよりもコルネをうまくふくことを話した。
「おお、カピ君もいるな」とガスパールおじさんが言った。「おまえ、あしたはゆっくり休んで行きなさい。ちょうど日曜日で、わたしたちにもいいごちそうだ。なんでもアルキシーの話ではあの犬は学校の先生と役者をいっしょにしたよりもかしこいというじゃないか」
わたしはおばさんに対して気持ち悪く感
前へ
次へ
全163ページ中59ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング