ながらさけび声を聞いたので、すぐリカルドのそばにかけ寄《よ》って、むちを手からうばった。それからガロフォリのほうへくるりと向いて、うで組みをしたままかれの前につっ立った。
 これはいかにもとっさのあいだに起こったので、しばらくはガロフォリもぽかんとしていた。けれどもすぐ気を取り直しておだやかに言った。
「どうもおそろしいようじゃないか。なにね、あの子どもは気がちがっているのだ」
「はずかしくはないか」ヴィタリスがさけんだ。
「それ見ろ、わたしもそういうことだ」とガロフォリがつぶやいた。
「よせ」とヴィタリス親方が命令《めいれい》した。「とぼけるなよ。おまえのことだ。子どもではない。こんな手向かいのできないかわいそうない子どもらをいじめるというのは、なんというひきょうなやり方だ」
「この老《お》いぼれめ。よけいな世話を焼《や》くな」とガロフォリが急に調子を変《か》えてさけんだ。
「警察《けいさつ》ものだぞ」とヴィタリスが反抗《はんこう》した。
「なに、きさま、警察でおどすのか」とガロフォリがさけんだ。
「そうだ」と、わたしの親方は乱暴《らんぼう》な相手《あいて》の気勢《きせい》にはちっと
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