ーしかもらえなかった。だからこの材木《ざいもく》をぶたれないおまじないにするのだ。これで四スーの不足《ふそく》の代わりになるだろう」
「やっぱりやられるよ。なんの足しになるものか。順《じゅん》ぐりにやられるんだ」
 マチアはそう機械的《きかいてき》に言って、あたかもこの子どもも罰《ばっ》せられると思うのがかれに満足《まんぞく》をあたえるもののようであった。わたしはかれの優《やさ》しい悲しそうな目のうちに、険《けわ》しい目つきの表れたのを見ておどろいた。だれでも悪い人間といっしょにいると、いつかそれに似《に》てくるということは、わたしがのちに知ったことであった。
 一人一人子どもたちは帰って来た。てんでんにはいって来ると、ヴァイオリン、ハープ、ふえなど自分の楽器を寝台《ねだい》の上のくぎにかけた。音楽師《おんがくし》でなく、ただ慣《な》らしたけものの見世物をやる者は、小ねずみやぶたねずみをかごの中に入れた。
 それから重い足音がはしご段《だん》にひびいて、ねずみ色の外とうを着た小男がはいって来た。これがガロフォリであった。
 はいって来るしゅんかん、かれはわたしに目をすえて、それはいやな
前へ 次へ
全320ページ中310ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング