ができる。いわば胴体《どうたい》がなくって、足からすぐ首が生えているように見えた。その大きな頭は、まるでつり合いもなにもとれていなかった。そんなふうなからだつきでけっしてりっぱとは言えなかったが、その顔にはしかしきみょうに人をひきつけるものがあった。悲しみと優《やさ》しみの表情《ひょうじょう》、そしてそれから……たよりなげな表情であった。かれの大きな目は同情《どうじょう》をふくんで、相手《あいて》の目をひきつけずにはおかないのであった。
「確《たし》かに二時間すれば帰って来るのかね」と親方がたずねた。
「確かですよ。もう昼飯《ひるめし》の時間ですからね。ここで食べるのはガロフォリさんばかりですから」
「そうかい。もしそのまえに帰って来たら、ヴィタリスという人が来て、二時間たつとまた来ると言って帰ったと言ってください」
「かしこまりました」
 わたしも親方について行こうとすると、かれはわたしを止めた。
「おまえはここにおいで」とかれは言った。「少し休んでいるがいい」
「…………」
「おお、わたしは帰って来るよ」とかれはわたしの心配そうな顔つきを見て安心させるようにまた言った。わたしは例《
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