ぽな胃《い》ぶくろをかかえて歩き続《つづ》けた。とちゅうで行き会う人はふり返って、わたしたちの姿《すがた》が見た。まさしくかれらはきみょうに思ったらしかった。このじいさんは、子どもと犬をどこへ連《つ》れて行くのであろう。
沈黙《ちんもく》はわたしにとって、つらくもあり悲しくも思われた。わたしはしきりと話をしたかったけれど、やっと口を切ると、親方はぷっつり手短に答えて、顔をふり向けもしなかった。うれしいことにカピはもっと人づき(人づき合い)がよかった。それでわたしが足を引きずり引きずり歩いて行くと、ときどきかれのぬくい舌《した》が手にさわった。かれはあたかもお友だちのカピがここについていますよというように、優《やさ》しくなめてくれた。そこでわたしもさすり返してやった。わたしたちはおたがいに心持ちをさとり合った。おたがいに愛《あい》し合っていた。
わたしにとっては、これがなによりのたよりであったし、カピもそれをせめてものなぐさめとしているらしかった。物に感ずる心は犬の心も子どもの心もさしてちがいがなかった。
こうしてわたしがカピをかわいがってやると、カピもそれになぐさめられて、いくら
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