の》をするように、おりおり左のほうへ目を注ぐのを見たが、かれはなにも言わなかった。なにをかれは見つけようとするのであろう。
わたしは長い道の向こうばかりまっすぐに見ていた。この森がもうほどなくおしまいになって、人家が現《あらわ》れてきはしないかという望《のぞ》みをかけていた。
だが目の届《とど》く限《かぎ》り両側《りょうがわ》は雪にうずまった林であった。前はもう二、三間(四〜五メートル)先が雪でぼんやりくもっていた。
わたしはこれまで暖《あたた》かい台所の窓《まど》ガラスに雪の降《ふ》るところを見ていた。その暖かい台所がどんなにかはるか遠いゆめの世界のように思われることであろう。
でもやはり行くだけは行かなければならなかった。わたしたちの足はだんだん深く雪の中にもぐりこんだ。そのときふと、なにも言わずに親方が左手を指さした。なるほど、わたしはぼんやりと、空き地の中に堀立小屋《ほったてごや》のようなものを見た。
わたしたちはその小屋に通う道を探《さが》さなければならなかった。でも雪がもう深くなって、道という道をうずめてしまったので、これは困難《こんなん》な仕事であった。わたした
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