《やしな》ってはくださるだろう、だがあれの人格《じんかく》は作れません。それを作ることのできるのは人生の艱難《かんなん》ばかりです。あれはあなたの子にはなれません。やはりわたしの子どもです。それはどれほどあれにとって居心地《いごこち》がよかろうとも、あなたの病身のお子さんのおもちゃになっているよりは、はるかにましです。わたしもできるだけあの子どもを教えるつもりですから――とこうお言いになるのですよ」
「でもあの人、ルミの父さんでもないくせに」とアーサはさけんだ。
「それはそうです。でもあの人はルミの主人です。ルミはあの人のものです。さし当たりルミはあの人に従《したが》うほかはありません。この子の両親が親方さんにお金で貸《か》したのですから。でもわたしはご両親にも手紙を書いて、やれるだけはやってみましょう」
「ああ、いけません。そんなことをしてはいけません」とわたしはさけんだ。
「それはどういうわけです」
「いいえ、どうかよしてください」
「でもそのほかにしかたがないんですもの」
「ああ、どうぞよしてください」
 ミリガン夫人《ふじん》が両親のことを言いださなかったなら、わたしは親方がく
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