から自分の言い分を申し立てた。それは打たれたことよりも、より多く自分が嘲弄《ちょうろう》(あざける)された事実についてであった。
 親方の目はそのあいだ部屋《へや》の中を探《さが》すようであった。それはわたしがいるかどうか探しているのだということがわかっていたから、わたしは思い切ってかくれ場所からとび出して、おおぜいの中をおし分けながら、前へ出て、いちばん前の列の、かれの席《せき》に近い所へ出た。かれのさびしい顔はわたしを見るとかがやきだした。わたしの目にもなみだがあふれ出した。
 まもなく裁判《さいばん》は決まった。かれは二か月の禁固《きんこ》と、百フランの罰金《ばっきん》に処《しょ》せられることになった。
 ああ、二か月の禁固《きんこ》。
 ドアは開かれた。なみだにぬれた目の中からわたしは、かれが憲兵《けんぺい》のあとからついて行くのを見た。ドアはその後ろからばたんと閉《と》ざされた。ああ、二か月の別《わか》れ。
 どこへわたしは行こう。


     船の上

 わたしが重たい心で、赤い目をふきふき宿屋《やどや》に帰ると、ちょうど亭主《ていしゅ》が庭に出ていた。
 わたしは犬のい
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