よ》せた。けれどもかれはとても言うことを聞くどころではなかった。わたしがつかまえようとすると、ちょろちょろにげ出して、す早く身をかわしては、相変《あいか》わらずとことこ歩いていた。
どうしてそんなことになったかわからなかったが、たぶん巡査《じゅんさ》はあんまり腹《はら》を立てて気がちがったのであろう。なんでもわたしがさるをけしかけているように思ったとみえて、いきなりなわ張《ば》りの中へとびこんで来た。
と思うまにかれはとびかかって来て、ただ一打ちでわたしを地べたの上にたたきたおした。
わたしが目を開いて起き上がろうとすると、ヴィタリス老人《ろうじん》はどこからとび出して来たものか、もうそこに立っていた。かれはちょうど巡査《じゅんさ》のうでをおさえたところであった。
「わたしはあなたがその子どもを打つことを止めます。なんというひきょうなまねをなさるのです」とかれはさけんだ。
しばらくのあいだ二人の人間はにらみ合って立っていた。
巡査《じゅんさ》はおこってむらさき色になっていた。
親方はどうどうとした様子であった、かれは例《れい》の美しいしらが頭をまっすぐに上げて、その顔には憤
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