」と親方は言って頭を下げた。
巡査《じゅんさ》が大またに出て行くと、親方はこしをほとんど地べたにつくほどに曲げて、からかい面《づら》に敬礼《けいれい》していた。そして芝居《しばい》は続《つづ》けて演《えん》ぜられた。
わたしは親方が犬の口輪《くちわ》を買うかと思っていたけれども、かれはまるでそんな様子はなかった。その晩《ばん》は巡査とけんかをしたことについては一|言《ごん》の話もなしに過《す》ぎた。
わたしはとうとうがまんがしきれなくなって、こちらからきりだした。
「あしたもしカピが芝居《しばい》の最中《さいちゅう》に、口輪《くちわ》を食い切るようなことがあるといけませんから、まえからそれをはめておいて慣《な》らしてやらないでもいいでしょうか。わたしたちはカピによくはめているように教えこむことができるでしょう」
「おまえはあれらの小さな鼻の上にそんな物をのせたいとわたしが思っているというのか」
「でも巡査《じゅんさ》がやかましく言いますから」
「おまえはんのいなかの子どもだな。百姓《ひゃくしょう》らしくおまえは巡査をこわがっているのか。心配するなよ。わたしはあしたうまい具合に取り
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