だがそれは返事はしないで、ただ黙った。その笑い声は鳥の鳴き声めいていた。
 するとけものかな。
 主人はやはり問いを続《つづ》けた。
 こうなると、それが今度口をきいて返事をしたら、やはり人間にちがいなかった。
 ところでわたしのびっくりしたことには、その怪物《かいぶつ》は、この近所には人家はないが、ひつじ小屋は一けんあるから、そこへ連《つ》れて行ってやろうと言った。
 おやおや、口がきけるのに、なぜけものような前足があるのだろう。
 わたしに勇気《ゆうき》があったら、その男のそばへ行って、どんなふうに前足ができているか見て来るところであったろうが、わたしはまだ少しこわかった。そこで背嚢《はいのう》をしょい上げてひと言も言わずに親方のあとについて行った。
「これでおまえ、正体がわかったろう」と親方は言って、道みち歩きながらも笑《わら》っていた。
「でもぼくはまだなんだかわかりません。じやあこのへんには大男がいるのですか」
「そうさ。竹馬に乗っていれば大男にも見えるさ」
 そこでかれはわたしに説明《せつめい》してくれた。砂地《すなじ》や沼沢《しょうたく》か多いランド地方の人は、沼地《
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