胸《むね》にも、元気をつけなければならなかった。なぜといって、もう終わる時のないように広いさばくの道を歩いて行くとき、だれでもばんやりして、わけのわからない悲しみと、がっかりしたような心持ちに胸《むね》がふさがるのであった。
そののちもわたしはたびたび海上の旅をしたが、いつも大洋のまん中で帆《ほ》かげ一つ見えないとき、わたしはやはりこの無人《むじん》の土地で感じたとおりの言いようもない悲しみを、また経験《けいけん》したことがあった。
大洋の中にいると同様に、わたしたちの日は遠い秋霧《あきぎり》の中に消えている地平線まで届《とど》いていた。ひたすら広漠《こうばく》と単調《たんちょう》が広がっている灰色《はいいろ》の野のほかに、なにも目をさえぎるものがなかった。
わたしたちは歩き続《つづ》けた。でも機械的《きかいてき》にときどきぐるりと見回すと、やはりいつまでも同じ場所に立ち止まったまま、少しも進んでいないように思われた。目に見える景色《けしき》はいつでも同じことであった。相変《あいか》わらずの灌木《かんぼく》、相変わらずのえにしだ[#「えにしだ」に傍点]、相変わらずのこけであった。
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