ほうをながめたり、後ろのほうをながめたり、ただもうぼんやりそこらを見回していた。
 しかし、ふとわたしの目は一点にとどまった。それは川の面をふさいでいるおびただしい船であった。
 つまりそれはなんだかわけのわからない、ごたごたした活動であったが、それが自分でもはっきりつかむことのできない、ひじょうに強い興味《きょうみ》をわたしの心にひき起こした。
 いくそうかの船は帆《ほ》をいっぱいに張《は》って、一方にかたむきながら、ゆうゆうと川を下って行くと、こちらからは反対に上って行った。島のように動かずに止まっているものもあれば、どうして動いているかわからないで、くるくる回っている船もあった。最後《さいご》にもう一つ、帆柱《ほばしら》もなければ、帆もなしに、ただえんとつの口から黒いけむりのうずを空に巻《ま》きながら、黄ばんだ水の上に白いあわのあぜを作りながら、ずんずん走っているものもあった。
「ちょうどいまが満潮《まんちょう》だ」と親方はこちらから問いかけもしないのに、わたしのおどろいた顔に答えて言った。
「長い航海《こうかい》から帰って来た船もある。ほら、ペンキがはげてさびついたようになって
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