ら見晴らす地平線上に限《かぎ》られていた。
 わたしの親方は王さまに会ったことがある。その王さまはかれと話をした。いったいこの親方は若《わか》いときなんであったろう。それがどうしてこの年になって、いまのような身の上になったのだろう……
 わたしの、活発に鋭敏《えいびん》に働《はたら》く幼《おさな》い想像《そうぞう》と好奇心《こうきしん》は、この一つのことにばかり働《はたら》いた。


     七里ぐつをはいた大男

 南部地方の高原のかわききった土地をはなれてのち、わたしたちは、いつも青あおとした谷間の道を通って、旅を続《つづ》けた。これはドルドーニュ川の谷で、わたしたちは毎日少しずつこの谷を下りて行った。なにしろこの地方は土地が豊《ゆた》かで、住民《じゅうみん》も従《したが》って富貴《ふうき》であったから、わたしたちの興行《こうぎょう》の度数もしぜん多くなり、例《れい》のカピのおぼんの中へもなかなかたくさんのお金が投げこまれた。
 ふと空中に、ふうわりとちょうど霧《きり》の中にくもの糸でつり下げられたように、橋が一つ、大きな川の上にかかっていた。川はその下にごくおだやかに流れていた
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