張《ぱ》って行《い》って、もし知《し》っている者《もの》にでも逢《あ》って、盗《ぬす》んで来《き》たなぞと疑《うたが》われでもしたら、とんだ迷惑《めいわく》な目《め》にあわなければならない。ちょうどこのうちの人たちはよそへ行くところらしいから、きっと馬《うま》が入《い》り用《よう》だろう。ここらで売《う》って行《い》く方《ほう》が安心《あんしん》だ。」
こう思《おも》って、若者《わかもの》は、
「もしもし、安《やす》くしておきますから、この馬《うま》を買《か》って下《くだ》さいませんか。」
といいました。するとそこのうちの人たちは、なるほどそれは有《あ》り難《がた》いが、安《やす》く売《う》るといってもさしあたりお金《かね》がない。その代《か》わり田《た》とお米《こめ》を分《わ》けて上《あ》げるから、それと取《と》りかえっこなら、馬《うま》をもらってもいいといいました。若者《わかもの》は、
「わたしは旅《たび》の者《もの》ですから、田《た》やお米《こめ》をもらっても困《こま》りますが、せっかくおっしゃることですから、取《と》りかえっこをしましょう。」
とふしょうぶしょうにいいまし
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