、食《た》べ物《もの》をやったりするうちに、すっかり元気《げんき》がついて、しゃんしゃん歩《ある》き出《だ》しました。
 若者《わかもの》は、近所《きんじょ》で布《ぬの》一|反《たん》の代《か》わりに、手綱《たづな》とくつわを買《か》って馬《うま》につけますと、さっそくそれに乗《の》って、またずんずん歩《ある》いて行きました。
 その晩《ばん》は宇治《うじ》の近《ちか》くで日が暮《く》れました。若者《わかもの》はゆうべのようにまた布《ぬの》一|反《たん》を出《だ》して、一|軒《けん》の家《いえ》に泊《と》めてもらいました。
 その明《あ》くる朝《あさ》早《はや》くから、若者《わかもの》はまた馬《うま》に乗《の》って、ぽかぽか出《で》かけました。もう間《ま》もなく京都《きょうと》の町《まち》に近《ちか》い鳥羽《とば》という所《ところ》まで来《き》かかりますと、一|軒《けん》の家《いえ》で、どこかうち中《じゅう》よそへ旅《たび》にでも立《た》つ様子《ようす》で、がやがやさわいでおりました。若者《わかもの》はふと考《かんが》えました。
「この馬《うま》をうかうか京都《きょうと》まで引《ひ》っ
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