ことをいろいろとこしらえて、お姫《ひめ》さまが平生《へいぜい》大臣《だいじん》のお娘《むすめ》に似合《にあ》わず、行儀《ぎょうぎ》の悪《わる》いことをさんざんに並《なら》べて、
「いくら止《と》めても、ばかにしていうことをちっとも聴《き》かないのです。」
とおいいつけになりました。
宰相殿《さいしょうどの》はなおなおおおこりになって、一寸法師《いっすんぼうし》にいいつけて、お姫《ひめ》さまをお屋敷《やしき》から追《お》い出《だ》して、どこか遠《とお》い所《ところ》へ捨《す》てさせました。
一寸法師《いっすんぼうし》はとんだことをいい出《だ》して、お姫《ひめ》さまが追《お》い出《だ》されるようになったので、すっかり気《き》の毒《どく》になってしまいました。そこでどこまでもお姫《ひめ》さまのお供《とも》をして行くつもりで、まず難波《なにわ》のおとうさんのうちへお連《つ》れしようと思《おも》って、鳥羽《とば》から舟《ふね》に乗《の》りました。すると間《ま》もなく、ひどいしけ[#「しけ」に傍点]になって、舟《ふね》はずんずん川《かわ》を下《くだ》って海《うみ》の方《ほう》へ流《なが》されました。それから風《かぜ》のまにまに吹《ふ》き流《なが》されて、とうとう三日三晩《みっかみばん》波《なみ》の上で暮《く》らして、四日《よっか》めに一つの島《しま》に着《つ》きました。
その島《しま》には今《いま》まで話《はなし》に聞《き》いたこともないようなふしぎな花《はな》や木がたくさんあって、いったい人が住《す》んでいるのかいないのか、いっこうに人らしいものの姿《すがた》は見《み》えませんでした。
一寸法師《いっすんぼうし》はお姫《ひめ》さまを連《つ》れて島《しま》に上《あ》がって、きょろきょろしながら歩《ある》いて行きますと、いつどこから出てきたともなく、二|匹《ひき》の鬼《おに》がそこへひょっこり飛《と》び出《だ》してきました。そしていきなりお姫《ひめ》さまにとびかかって、ただ一口《ひとくち》に食《た》べようとしました。お姫《ひめ》さまはびっくりして、気《き》が遠《とお》くなってしまいました。それを見《み》ると、一寸法師《いっすんぼうし》は、例《れい》のぬい針《ばり》の刀《かたな》をきらりと引《ひ》き抜《ぬ》いて、ぴょこんと鬼《おに》の前《まえ》へ飛《と》んで出ました。そし
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