ジャックと豆の木
楠山正雄

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)足《た》りなくなる

[#]:入力者注 主に外字の注記や傍点の位置の指定
(例)たりない[#「たりない」に傍点]
−−

         一

 むかしむかし、イギリスの大昔、アルフレッド大王の御代のことでございます。ロンドンの都からとおくはなれたいなかのこやに、やもめの女のひとが、ちいさいむすこのジャックをあいてに、さびしくくらしていました。かけがえのないひとりむすこですし、それに、ずいぶんのんきで、ずぼらで、なまけものでしたが、ほんとうは気だてのやさしい子でしたから、母親は、あけてもくれても、ジャック、ジャックといって、それこそ目の中にでも入れてしまいたいくらいにかわいがって、なんにもしごとはさせず、ただ遊ばせておきました。
 こんなふうで、のらくらむすこをかかえた上に、このやもめの人は、どういうものか運がわるくて、年年ものが足《た》りなくなるばかり、ある年の冬には、もう手まわりの道具や衣類《いるい》まで売って、手に入れたおかねも、手内職《てないしょく》なんかして、わずかばかりかせぎためた
次へ
全19ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング