それは主人の人くい鬼が、もう、そとからかえって来たのです。鬼のお上さんは、大あわてにあわてて、ジャックを、だんろの中にかくしてしまいました。
鬼は、へやの中にはいると、いきなり、ふうと鼻をならしながら、たれだってびっくりしてふるえ上がるような大ごえで、
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「フン、フン、フン、
イギリス人の香《か》がするぞ。
生きていようが死んでよが、
骨ごとひいてパンにしょぞ。」
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と、いいました。すると、お上さんが、
「いいえ、それはあなたが、つかまえて、土の牢《ろう》に入れてあるひとたちの、においでしょう。」といいました。
けれど鬼の大男は、まだきょろきょろそこらを見まわして、鼻をくんくんやっていました。でも、どうしても、ジャックをみつけることができませんでした。
とうとうあきらめて、鬼は、椅子《いす》の上に腰《こし》をおろしました。そしてがつがつ、がぶがぶ、たべたりのんだりしはじめました。そっとジャックがのぞいてみていますと、それはあとからあとから、いつおしまいになるかとおもうほどかっこむので、ジャックは、目ばかりまるくしていました。さて、
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