》はハープでもならすかな。」といいました。
 ジャックが、そっとお釜のふたをあけてのぞいてみますと、玉でかざった、みごとなハープのたて琴《ごと》が目にはいりました。
 [#空白は底本では欠落]鬼の大男は、ハープをテーブルの上にのせて、
「なりだせ。」といいました。
 すると、ハープは、ひとりでになりだしました。しかもその音《ね》のうつくしいことといったら、どんな楽器《がっき》だって、とてもこれだけの音《ね》にはひびかないほどでしたから、ジャックは、金のたまごのにわとりよりも、金と銀とのいっぱいつまった袋よりも、もっともっと、このハープがほしくなりました。
 するうち、ハープの音楽を、たのしい子守うたにして、さすがの鬼が、いい心もちにねむってしまいました。ジャックは、しめたとおもって、そっとお釜の中からぬけだすと、すばやくハープをかかえてにげだしました。ところが、あいにく、このハープには、魔法がしかけてあって、とたんに、大きな声で、
「おきろよ、だんなさん、おきろよ、だんなさん。」と、どなりました。
 これで、大男も目をさましました。むうんと立ち上がってみると、ちっぽけな小僧が、大きなハ
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