び》に出るというのは、つらいものにちがいありませんでした。
 やっと、しょうきづいて見ると、もみの木は、ほかの木といっしょにわらにくるまれて、どこかのうちのにわのなかにおかれていました。そばではひとりの男がこういっていました。
「この木はすてきだなあ。これいっぽんあればたくさんだ。」
 そこへはっぴをきた、ふたりの男がやってきました。そしてもみの木を、りっぱにかざった、大きなへやにはこんでいきました。へやのかべにはいろいろながく[#「がく」に傍点]が、かかっていました。タイルばりの大きなだんろのそばには、ししのふたのついた、青磁《せいじ》のかめが、おいてありました。そこには、ゆりいすだの、きぬばりのソファだの、それから、すくなくとも、こどもたちのいいぶんどおりだとすると、百円の百倍もするえほんや、おもちゃののっている、大きなテーブルなどがありました。もみの木は、砂《すな》がいっぱいはいっている、大きなおけのなかにいれられました。けれど、たれの目にも、それはおけとは見えませんでた。それは青あおした、きれでつつまれて、うつくしい色もようのしきものの上においてありました。まあ、このさき、どん
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