Bところが、ある日、木こりがやってきて 森のなかにえらい革命《かくめい》さわぎをおこした、それで一族は、ちりぢりばらばらになってしまった。でも、宗家《そうけ》のかしらは第一等の船の親柱に任命されたが、その船はいつでも世界じゅう漕《こ》ぎまわれるというりっぱな船だ。ほかの枝も、それぞれの職場《しょくば》におちついている。ところで、わたしたちは、いやしい人民どものために、あかりをともしてやるしごとを引きうけた。そういうわけで、こんな台所へ、身分のあるわれわれが来たのも、まあはきだめにつる[#「つる」に傍点]がおりたというものだ。」
「わたしのうたう歌は、すこし調子《ちょうし》がちがっている。」と、マッチのそばにいた鉄なべがいいました。「[#「「」は底本では欠落]わたしが世の中に出て来たそもそもから、どのくらい、わたしのおなかで煮たり沸かしたり、そのあとたわしでこすられたか分からない。わたしは徳用でもち[#「もち」に傍点]のよいことを心がけているので、このうちではいちばんの古参と立てられるようになった。わたしのなによりのたのしみは、食事のあとで、じぶんの居場所におさまって、きれいにみがかれて
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