Sのなかでどのくらい不愉快に感じているか、きみたちにはそうぞうもつかんだろう。ぜんたい、これは晩をすごすてきとうな方法でありましょうか。家のなかをきれいに片づけておくほうが、よっぽど気がきいているのではないですか。諸君は、それぞれじぶんたちの場所にかえったらいいでしょう。その上で、ぼくが、あらためて司会《しかい》をしよう。すこしはかわったものになるだろう。」
「よし、みんなで、さわごうよ。」と、一同がいいました。
 そのとき、ふと戸があきました。このうちの女中がはいって来たのです。それでみんな[#「みんな」は底本では「みん」]はきゅうにおとなしくなって、がたりともさせなくなりました。でも、おなべのなかまには、ひとりだって、おもしろいあそびをしらないものはありませんでしたし、じぶんたちがどんなになにかができて、どんなにえらいか、とおもわないものはありませんでした。そこで、
「もちろん、おれがやるつもりになれば、きっとずいぶんおもしろい晩にしてみせるのだがなあ。」と、おたがいにかんがえていました。
 女中は、マッチをつまんで、火をすりました。――おや、しゅッと音がしたとおもうと、ぱっときも
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