んをじぶんの帯《おび》のあいだに、ちょこなんとはさんで、仲《なか》よく話しながら行きました。でも往来《おうらい》の人には、帯の上におむこさんのいることがわからず、およめさんがぶつぶつひとりごとをいってあるいているように見えるので、みんなふりかえって、ふしぎそうな顔をしました。
 ある日、お天気がいいので、いつものように、帯のあいだにおむこさんをはさんで、およめさんは、お里の両親をたずねに行きました。
 水神《すいじん》のお社《やしろ》の前までくると、たにしのおむこさんは、
「どうも帯のあいだにのせられてばっかりいるのも、きゅうくつになった。すこしおりて休んでいこう」
と、およめさんにいいました。
「ではこの上がきれいで、ひろくっていいでしょう」
と、およめさんはいって、石の鳥居《とりい》の上に、おむこさんを休ませました。
「ああ、ひろい田んぼが見えて、青青《あおあお》した空がながめられて、ひさしぶりでいい心持《こころも》ちだ。わたしはここでしばらく日向《ひなた》ぼっこをしているから、そのあいだにお前はお社へおまいりしてくるといいよ」
「それでは、いそいで行ってまいります」
 およめさん
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