うか、たずねにきました。長者もいまさら、それはじょうだんだともいえないので、
「ああ、ほんとうだとも。では、ふたりのむすめをよんで、どちらがむすこさんのおよめになるかきいてみよう」
といって、まず姉《あね》のむすめをよび出しました。
「かわいいたにしどのを、お前はむこにとりたいか」
こういうと、姉のむすめは半分もきかずに、
「まあ田のなかのきたない虫っけらなんか」
と、おこった声でいって、畳《たたみ》をけ立てて出て行きました。
そこで、こんどは、妹《いもうと》のむすめをよび出しました。
「かわいいたにしどのを、お前はむこにとりたいか」
こういうと、妹のむすめは、
「おとうさんのお約束《やくそく》なさったことなら、そのとおりにいたしましょう」
と、すなおにこたえたので、とうとう、たにしの子は長者のむこになることになりました。
三
長者のむすめは、たにしのおむこさんをだいじにして、その上、たにしのおとうさんやおかあさんにもしんせつにしてやりました。でもこのおむこさんはあまりちいさいので、一緒《いっしょ》に里のおとうさんおかあさんの家へ行くときにはおよめさんはおむこさ
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