するうち雨が降りだしました。雨しずくがだんだん大きくなって、とうとうほんとうのどしゃ降りになりました。雨が上がったとき、ふたり町のこどもがでて来ました。
「おい、ごらんよ。すずの兵隊がいるよ。舟にのせてやろう。」と、そのひとりがいいました。そこでふたりは、新聞で紙のお舟をつくりました。そしてすずの兵隊をのせました。兵隊は新聞のお舟にのったまま、みぞのなかをながされていきました。ふたりのこどもはいっしょについてかけながら手をたたきました。やあ、たいへん。みぞのなかはなんてえらい波が立つのでしょう、流の早いといったらありません。なにしろ大雨のあとでした。紙の小舟は、上下にゆられて、ときどきくるくるはげしくまわりますと、すずの兵隊はさすがにふるえました。でも、やはりしっかりと立って、顔色《かおいろ》ひとつ変えず、銃剣肩に、まっすぐにまえをにらんでいました。
 いきなりお舟は、長い下水《げすい》の橋の下へはいっていきました。それで、箱のなかにはいっていたときと同様、まっ暗になりました。
「いったい、おれはどこへいくのだ。」と、兵隊はおもいました。「そうだ、そうだ。これは小鬼《こおに》のや
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