つのしわざなのだ。いやはや、なさけない。あのかわいいむすめが、いっしょにのっていてくれるなら、この二倍もくらくても、ちっともこまりはしないのだが。」
こうおもっているところへ、ふと下水《げすい》の橋の下に住む大きなどぶねずみ[#「どぶねずみ」は底本では「とぶねずみ」]がでて来ました。
「おい、通行証《つうこうしょう》はあるか。」と、ねずみはいいました。「通行証を出してみせろ。」
でも、すずの兵隊は、だんまりで、よけいしっかりと銃剣をかついでいました。お舟はずんずん流れていきました。ねすみはあとから追いかけて来ました。
うッふ、ねずみはきいきい歯ぎしりして、わらくずや木切れに、どんなによびかけたことでしょう。「あいつをおさえろ。あいつをおさえろ。あいつは通行|税《ぜい》をはらわない。通行証もみせやしない。」
でも、流れはだんだんはげしくなりました。やがて橋がおしまいになると、すずの兵隊は、日の目を見ることができました。でもそれといっしょにごうッ[#「ごうッ」に傍点]という音がきこえました。それはだいたんな人でもびっくりするところです。どうでしょう、ちょうど橋がおしまいになったとこ
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