とっていました。
 やがて晩になると、ほかのすずの兵隊は、のこらず箱のなかへ入れられて、このうちの人たちもみんなねにいきました。さあ、それからがおもちゃたちのあそび時間で、「訪問ごっこ」だの、「戦争ごっこ」だの、「舞踏会《ぶとうかい》」だのがはじまるのです。すずの兵隊たちは、箱のなかでがらがらいいだして、なかまにはいろうとしましたが、ふたをあけることができませんでした。くるみ割はとんぼ返りをうちますし、石筆《せきひつ》は石盤《せきばん》の上をおもしろそうにかけまわりました。それはえらいさわぎになったので、とうとうカナリヤまでが目をさまして、いっしょにお話をはじめました。それがそっくり歌になっていました。ただいつまでも、じっとしてひとつ場所をうごかなかったのは、一本足のすずの兵隊と、踊ッ子のむすめだけでした。むすめは片足のつまさきでまっすぐに立って、両手をまえにひろげていました。すると、兵隊もまけずに、片足でしっかりと立っていて、しかもちっともむすめから目をはなそうとしませんでした。
 するうち、大時計が十二時を打ちました。
「ぱん。」いきなりかぎタバコ箱のふたがはね上がりました。
 で
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