ずしそうなモスリンのスカートをつけて、ちいさな細い青リボンを肩にゆいつけているのが、ちょうど肩掛のようにみえました。リボンのまんなかには、その子の顔ぜんたいぐらいあるぴかぴかの金ぱくがついていました。このちいさなむすめは両腕をまえへのばしていました。それは踊ッ子だからです。それから片足をずいぶん高く上げているので、すずの兵隊には、その足のさきがまるでみえないくらいでした。それで、この子もやはり片足ないのだろうとおもっていました。
「あの子はちょうどおれのおかみさんにいいな。」と、兵隊はおもいました。「でも、身分がよすぎるかな。あのむすめはお城に住んでいるのに、おれはたったひとつの箱のなかに、しかも二十五人いっしよにほうりこまれているのだ。これではとてもせまくて、あの子に来てもらっても、いるところがありはしない。でも、どうかして近づきにだけはなりたいものだ。」
そこで兵隊は、つくえの上にのっているかぎタバコ箱のうしろへ、ごろりとあおむけにひっくりかえりました。そうしてそこからみると、かわいらしいむすめのすがたがらくに見えました。むすめは相かわらずひっくりかえりもしずに、片足でつり合いを
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