お前《まえ》さんはあまりみかけない人だが、どこから来《き》たのだね。」
「わたしはくらげといって竜王《りゅうおう》の御家来《ごけらい》さ。今日《きょう》はあんまりお天気《てんき》がいいので、うかうかこの辺《へん》まで遊《あそ》びに来《き》たのですが、なるほどこの猿《さる》が島《しま》はいい所《ところ》ですね。」
「うん、それはいい所《ところ》だとも。このとおりけしきはいいし、栗《くり》や柿《かき》の実《み》はたくさんあるし、こんないい所《ところ》は外《ほか》にはあるまい。」
 こう言《い》って猿《さる》が低《ひく》い鼻《はな》を一生懸命《いっしょうけんめい》高《たか》くして、とくいらしい顔《かお》をしますと、くらげはわざと、さもおかしくってたまらないというように笑《わら》い出《だ》しました。
「はッは、そりゃ猿《さる》が島《しま》はいい所《ところ》にはちがいないが、でも竜宮《りゅうぐう》とはくらべものにならないね。猿《さる》さんはまだ竜宮《りゅうぐう》を知《し》らないものだから、そんなこと言《い》っていばっておいでだけれど、そんなことをいう人に一|度《ど》竜宮《りゅうぐう》を見《み》せ
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