うして海《うみ》の中へ猿《さる》を連《つ》れて来《き》ましょう。」
「それはお前《まえ》がおぶってやるのさ。」
「ずいぶん重《おも》いでしょうね。」
「でもしかたがない。それはがまんするさ。そこが御奉公《ごほうこう》だ。」
「へい、へい、なるほど。」
 そこでくらげは、ふわりふわり海《うみ》の中に浮《う》かんで、猿《さる》が島《しま》の方《ほう》へ泳《およ》いで行きました。

     二

 やがて向《む》こうに一つの島《しま》が見《み》えました。くらげは「あれがきっと猿《さる》が島《しま》だな。」と思《おも》いながら、やがて島《しま》に泳《およ》ぎつきました。陸《おか》へ上《あ》がってきょろきょろ見《み》まわしていますと、そこの松《まつ》の木の枝《えだ》にまっ赤《か》な顔《かお》をして、まっ赤《か》なお尻《しり》をしたものがまたがっていました。くらげは、「ははあ、あれが猿《さる》だな。」と思《おも》って、何《なに》くわない顔《かお》で、そろそろとそばへよって、
「猿《さる》さん、猿《さる》さん、今日《こんにち》は、いいお天気《てんき》ですね。」
「ああ、いいお天気《てんき》だ。だが
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