く約束をして一緒に出掛たのですが、家のこんだところで、なかなか見付かりません、友人が
「どうだい、こっちから行けそうだね」
そういってひょいと露地《ろじ》にはいろうとするのです。それを見た私はなんの気なしに、
「駄目だよ、袋路だよ」
といってしまいました、友人は不思議そうな顔をして、
「なんだい、君、ここらを知ってるのか」
そういわれて見て私ははっとしました。なぜそんなことをいったのだろう、私自身この辺は全く始めてなので、知っている筈はないのです。
「いや、そう思うだけさ」
「なんだ、行って見よう。――おやつきあたり[#「つきあたり」に傍点]だ、矢張り知ってるんじゃないか」
「ふーん」
友人にそういわれて、今度は私が不思議がる始末です。私はこんなところを知っている筈はないのだが――どうしてあんなことをいったのだろう。そう思ってあるきながら考えてみますと、夢、夢でした。いつか夢でここをうろついたのです。確にそう考えるより仕方がないのです。私はぞっとするようないやないやな気持におそわれました。
こういうように私には段々夢と現実との境がへんにぼかされて来ました。私はその恐ろしさから
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