なりました。それは活動が面白かったからではありません、ストオリーなどは問題ではありませんでした。ただ背景に私の夢をさがし求めたのです。白昼、銀幕に夢をもとめて霧中《むちゅう》になっていたのです。だから人々のあまり好かない変った風景の実写など、私は最も力を入れてみつめるのでした。
 こんな状態がかなり長く続いてその中に私はどうにか中学を卒《お》え専門学校に通うようになりました。勿論この頃も毎夜必ず幾つも夢を見続けました、しかしこの頃から私の夢は不可思議な、現世との連絡を帯びて来たのです。たとえば昼間散歩の時、ふと見上げた教会の鐘をその夜夢で見たのです。それもその鐘が夜中鐘楼の中を馳廻っている夢なのです。私がたった一人でそれを見ていますと、はっと思った途端、その鐘が墜落して木破微塵《こっぱみじん》になってしまい、その耳を潰《つぶ》すような恐ろしい音に眼をさましたりします。すると翌日の新聞にはなにかで有名なその鐘が昨夜落ちて破《こわ》れたことを告げているのです。勿論、遠くはなれたところですから音のきこえるわけは全然ない筈です。
 又こんなことがありました。友人と久しく会わない先輩のところへ行
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