、これは頭のいい方法に違いない。
「どうです、ここは暑いから家へ行ってお茶でも――」
「ええ、私だけは交際してくれるんですか」
「皮肉ですね」
「いやいや、そういう訳じゃないんです。交際を、お願いしているんです……」
私は、少ししどろもどろだった。家へ行けば、あのルミという美少女がいるであろう、という期待を、見透かされまいとする気持が、逆に妙なことをいってしまったらしい。
森源は、先きに立って、温室を通り抜けた。そして、玄関にかかると、自然にドアが開いて、我々はポケットに手を入れたまま這入ることが出来た。
(ルミがドアを開けてくれたのか)
と思って、つッと振返ってみたが、ルミの姿はなく、而も、ドアは元通りぴったりと閉っているのだ。
廊下を通って、書斎らしい部屋に行った。その時も我々はドアに手をふれなかった。そればかりではない、そのドアには把手《ハンドル》が附いていないのだ。
「自動開閉ですよ」
森源は、私の不審そうな眼に答えた。
それから気をつけてみると、どうやらこの家は、あらゆる面に、極度に電化されているらしいことがわかった。気温が一定度より降れば暖房装置が働き、昇ればす
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