合せて考えついたのであった。つまり、森源の脳波と、私の脳波とは、同一波長ではないのかということである。ラジオにしたって、沢山ある放送局が、完全に分離することが出来るというのは、波長が違うからだ、と聞いていた。若し、同じ波長の放送局が二つあったとしたら、必ず受信器は、両方の局のを受信するに違いないのだ。
そうだ、森源と私とは、偶然にも脳波が一致しているに違いない。
私が、ルミに遊びに来て貰えまいか、と思ったことがルミに受信されて、彼女は、その通り動いて来たのだし、私の彼女を密かに愛することを写して、ルミは、あのようなことをいったに違いない。そうだ、それ以外になんとも説明の仕様がないではないか。
それにしても、なんという致命的な偶然であろう。私は、最早、二度と森源を尋ねることも、ルミのことを考えることも、断念しなければならないのだ。
私は、この意見を、わざと手紙で、森源に書き送った。密かに、彼の否定の返事を待ちつつも――。
ところが、折りかえし森源から来たハガキには、裏面にただ一つ、大きく『π』と書かれてあるきりだった。
π――一体、それは何を意味するのであろう。謎のような一字
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