が、私はそれを否定することは出来なかった。かすかに頷く私を見て、森源は尚もいうのだ。
「そして、それ以上に不幸なことは、どうやらルミも亦、あなたに恋を感じているらしいのです」
「えっ――」
 私は、思わず森源を見上げた。
「でも……私がルミさんを、いや、ルミさんがまさか電気人間だとは知らなかったから、美しい女として、恋めいたものを感じたのは認めますけど、然し、それにしても、哀しい機械である筈の彼女が、私に恋をするなどということが出来るのでしょうか、――いかに貴方の天才的技術で造られているかは知りませんけれど、でも、機械が、人造人間が恋をするという『意志』を持てるのでしょうか」
 半信半疑ながらも私は、人造人間に恋し、恋された男として、心中激しく狼狽せざるを得なかった。
(森源は、冗談をいっているのではないか?)
 然し、彼は、相変らず悲痛な顔をして、
「いや、事実です、第一僕の意志にないことだのに、ルミは、独りであなたの家まで来ました。ここまで来たのは瞭らかに、ルミの個人の意志なんです」
 そういえば、私にも一つ、思いあたることがあった。というのは、ここに来たときの、ルミの言葉だ、あの
前へ 次へ
全32ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
蘭 郁二郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング