『よし』と思い『いな』と思うと、その思うことによって生じた脳波は違って来るんです。その放射される脳波を、無線操縦と同じように、彼女がその頭の中にある受波装置で受けて増幅し、各機関を操縦する――、これが、脳波操縦なんですよ」
森源は、一寸言葉を切って、私が、その話を了解しているかどうかを確かめ、
「だから、彼女ルミを操縦するには、私が、頭の中で『立て』と思えば立ち、『右手を挙げ』と思えば、右手を挙げるのです。私は、命令を口に出す必要はない、ただ、頭の中で、命令を考えればいいのです」
「ほう――」
私は思わず感嘆の声を挙げてしまった。
なんという精巧な電気人間であろう。
問わず語らず、謂わば『以心伝心』で操縦することが出来るとは――。
これこそ、全く人間以上! のものである。
……私は、新たな眼をもって、さっきから足元に倒れているルミを見下した。
遺書『π』
「ところが……」
森源は、悲痛に、口元を歪めて居るのであった。
「ところが、このルミが、余り精巧であった為でしょう、あなたは、このルミに、人並み以上の好意を持たれたようです――」
「…………」
面映くはあった
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