っかりして下さい、と言おうとした時、案内も乞わずに飛込んで来た森源が、私の方には眼もくれず、
「ルミ、バカ!」
そういって一生懸命に駈けて来たらしく、まだ息をはずませながら、睨みつけた。
と、ルミは、そのまま硬直したように、床の上に、ガタンと倒れてしまった。その倒れた音はまるで椅子が倒れたように、ガタンという音だったのである。
ルミは、それっきり、微動もしなかった。
私は、怖る怖る森源の、血走った眼を見上げた。
「どうしたのです、一体――」
「…………」
やっと私の方を振り向いた森源は、
「いやあ、失礼しました。お騒がせして済みません、とんだ騒ぎをしてしまって……」
「そんなことは一向に構いませんよ、だが、ひどい音をたてて倒れたようですが――」
「そうです、丁度、電気が切れたのです」
「えッ、電気が切れた?」
「おや、まだ気づかれなかったんですか、ルミ、このルミは私が半生の苦心を払って、やっと造りあげた電気人間なんですよ――」
「電気人間!」
「そうです、私が命よりも大切にしている電気人間なんです」
私は、この時ほど驚いた事はなかった。たった今の今まで、私に好意をもってくれ
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