性を好まれる――というのではないですか。いいかえれば、僕は、科学小説とは架空小説と同義語だといえると思うのです。一種の空想小説だともいえると思うのです。ひどい言葉のようですけど、今迄のは、殆んどそういっていいと思うのですよ。例えば月世界旅行記、火星征服記、といったようなものはその興味あるテーマでしょう。然し又、その空想も『科学的にあり得ること、いつか為し得ること』という所が大切なのです。例えば永久動力などというのは、それが出来ない証明があるのですから、一寸科学小説とはいえませんね――おや、すると、矢ッ張り科学小説と空想小説とは違うかな……」
森源は、一寸頸をかしげたけれど、すぐ又
「……いや、いいのだ、ただ科学小説とは出来そうな空想をテーマにした小説、現在の科学でもってあり得そうな小説だ。そうでしょう?」
彼は一息ついて、私にその科学小説の定義を呑込ませようとした。
「なるほど、そうですね、月世界旅行というのは面白い考えです――が、地球から出て、果して月にまで行けますかね。というのは地球から月までの距離を一とするとですね、地球の引力は月の引力の六倍だそうですから、その距離の六分の五
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