どうしたんだい、島に上《あが》る早々この騒ぎは……」
「どうも、僕にもわからんのです」
 中野が『造られた』という意味を糺《ただ》すと
「そうか、そういう訳か、そりゃ慶子さんの説明不足がわるいぞ」
 叔父は、一寸慶子を睨んで見せると
「残念ながらこの島でも、人造人間をあれほど精巧に造るまでにはいっていないよ。何しろあの人たちは本当の女性《ひと》なんだからね……ただ整形外科の医学の方は人の顔の美醜を自由に造りかえる位にはいっている。顔の美醜といっても、眼は二つ鼻と口は一つというように造作にかわりはないんだ。要するにその造作の配置の問題だからね。その配置さえ適当にすれば醜女《しこめ》たちまち絶世の美女となるわけさ……といっても真逆《まさか》シンコ細工のようにちょいちょいするわけには行かんから、勢いモデルが必要となる。そのモデルに撰ばれたのが、ここにいる慶子さんだ。だからソックリ同じ美女が、ずらりと出来上ってしまったのさ……」
「なるほど――」
 中野は、やっと呑込めた。と同時にいささか満足でもあった。自分が思ったように、彼女はこの『日章島』に於いても、モデルにされるほど美しいのだ、と。

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