中野が呆然と立ちすくんでいると、慶子はその横顔を面白そうに見上げて
「くッくくくく」
 と、まるで悪戯《いたずら》ッ子がうまく相手を嵌《は》めこんだ時のように、いかにも嬉しそうに笑っていた。
「一寸、壮観でしょう……、私もはじめは、まるで私の影がそこら中にうろうろしているみたいに感じて、ずいぶんヘンだったんですけど……でも、馴れちまったわ。却ていい時もあるわよ、私が悪戯しても誰が誰だか解《わか》んなくなっちまうんですもん」
「……しかし、よくもまあこんなにソックリな人をあつめたもんですねえ」
 中野は、実際のところ一と眼慶子を見た時から、理想の女性にぶつかったような、自分の一生には、もう二度とこれ以上の女性《ひと》には逢うまいと思うような感激を覚えていた。それが、その慶子とソックリの女性に、こうずらりと並ばれて見ると、眼がくらくらするような気持ちであった。
「集めた、のじゃないわよ、造られたのよ」
 彼女は、とんでもないことを、平気でいった。
「造られた――?」
 中野は、ギョッとしてもう一遍見廻した。しかし人造人間にしては、あまりに精巧だった。精巧でありすぎた。
 いかに科学万
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