足の裏
蘭郁二郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)傍道《わきみち》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二三年|間《ま》のある

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)はしゃぎ[#「はしゃぎ」に傍点]切った
−−

      一

 さて、私がいまお話ししようというお話の主人公は、景岡秀三郎――という景岡浴場の主人なのですが、その人の色々変ったお話と、それに関連して探偵小説的な一つのトリックといったようなものを御紹介しようと思うのです。
 浴場の主人――などというと如何にも年輩の、シッカリした男を連想しますけど、景岡は私立大学を出たばかりの、まだ三十には二三年|間《ま》のある青年でした。大学を出たばかりの青年がお湯屋の主人なんて――、誠に不釣合な話です。だが彼の奇癖が、こんな商売をやらせたのです。
 一体、景岡秀三郎という青年は……チョット傍道《わきみち》になりますけれど……少年の時から、極く内気な性質《たち》でした。そうした少年にありがちな傾向として、彼も矢張り、小学校という社会に投込まれた時に、どんなに驚ろいた
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