も思われて来るのだ。
ダガ――
『ナゼそんなことを始めたんだい』
私は、とうから聞こうと思っていた問題に辿りついた。
『それは、それは一寸』
彼は何故《なぜ》か一寸|口籠《くちごも》ったが、
『まァ、いってみれば、僕はあのまどろみの快感を味わいたいからなんだ、あのぬくぬくと暖かい床の上に長々と、ねているのか、覚めているのか、そんな訳のわからぬ快よい線を彷徨《さまよ》いながら起きる気持、手足には鉛がつまったように、いまにも抜け落ちそうなカッタルさ……僕にはその気分がたまらなく好ましいんだ、で、始めの中は、早く起きてはそのふらふらするような快感に陶酔していたんだが、それが段々深味におちて、もう救われなくなってしまったんだ――「眠り」という与えられたものを無理に引剥がした――罪かもしれないね……』
彼は、こういうと寂しそうな声をたてて笑うのであった。
(無理に眠りをへらして、そのふらふらする気持に陶酔するなんて……)
(でも、黒住のような変屈者《へんくつもの》には、そういうものかも知れぬ……)
『君、それだけの理由じゃないだろう』
私はワザと詰問するようにいった。
『えっ、そんなこ
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